オタクのなり損ない

俺はオタクとして生まれて、いつかまでは真っ当にオタクをやっていたはずだった。好きな趣味があって、趣味に生きていたはずだった。だけど、いつのまにかあの情熱は無くなっていた。

小学生の頃は暇さえあればゲームをしてた。学校にいない間はゲームが人生だったといってもいい。一人でいるときはポケモンとかドラクエとかのRPGをよくやってた。一緒に遊んでくれる友達とスマブラやモンハンをするのも楽しかった。

任天堂ハードのメジャーどこのゲームを主にやってたけど、マジコンに入ってたりしたよくわかんないゲームで妙に印象に残ってるのもあるな。黄金伝説の無人島のやつとかやたらやり込んでた。画面をただひたすらこすってチネリを作ったりするの、無限に。

中一で幸運にも出来た友達とは今でもよく飯に行く。公民館で3DSやったりスマホいじりながらダラダラしてたりしてたな。

再放送があった進撃の巨人を観たり、父にエヴァを観せられたりして、好きなアニメはいくつかあった。放送されてるやつを録画して追いかけてたのも何本かあったな。

コロコロコミックの影響でデュエマもやってた。何人か一緒にやる人もいて、少しだけ大会に出たりもした。

中二のクラスには、よく遊んでた友達は一人もいなかった。入学したてでみんな手探りの一年生と違って、二年生のクラス替えの後はある程度関係性が出来上がっていて、グループに入る余地がなかった。本当にクラスで話す人がいなかった。中一のクラスでは陽キャの間でカゲプロが流行るくらいにはオタク趣味が浸透していたけど、中二のクラスでのオタク趣味への目は一般的なものだった。おまけに、クラスで流行っていたソシャゲがモンストだった。パズドラしかやってなかった俺には、絶望的に話題がなかった。俺はクラスでぼっちになった。

クラスでぼっちといっても、昼休みや放課後には話す人がいたんだけど、周りで徐々に「萌え」の概念が流通するようになったとき、俺はそれを理解しようとしなかった。というか、謎の自意識が邪魔をした。「俺はそういうんじゃないから……」ってやつ。

中三になっても俺はぼっちだった。中二で何があったわけではないんだけど、教室が怖くてどうしても萎縮しがちになった。

アニメを観ても最終話まで見る気になれず、途中で飽きてしまうことが多くなった。デュエマを友達とやることは減ったので、安いデッキだけ残してカードをみんな売ってしまった。惰性だけで続けていたパズドラを消した。受験のことはずっと頭にこそあったけど、気を重くするだけで、俺は全く動かなかった。家に帰るとすぐ、ひたすら2chまとめを読んでいた記憶がある。

俺にとって、ずっとやってたいろんな趣味は本当に「好きなもの」だったんだろうか。もしかしたら単なるコミュニケーションツールに過ぎなくて、一人でも熱中できるほどの本物の情熱なんてものはそもそもありはしなかったんじゃないか。